骨粗しょう症

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骨粗しょう症のイラスト

骨粗しょう症

2019年の統計によると、日本人の平均寿命は、女性は87.45歳で7年連続、男性は81.41歳となり、8年連続で過去最高を更新しました。骨粗しょう症の患者数は高齢化とともに増え続け、日本の骨粗しょう症人口は現在 約1,300万人、今後も増え続けるという予想です。特に女性は閉経の影響で骨粗しょう症になりやすいと言われます。骨粗しょう症になると骨が弱いため、転んだときに骨折を起こしやすくなります。特に手足では、手首や股関節が折れやすいのですが、背骨も好発部位です。背骨は、特に転んだりしなくても、自然と体の重みだけで骨折することもあります。

骨の中を顕微鏡でのぞいてみると、骨梁(こつりょう)と言う細かい柱が立体的に無数につながった構造になっています。骨粗しょう症になると、この柱がだんだんと細くなって、弱くなってくるのです。骨は、外観上はずっと同じ形を保っているように見えますが、実は、細胞が常に入れ替わっています。骨を造る細胞と骨を吸収する細胞が常に働いていて、骨を保っているのです。骨粗しょう症では多くの場合、骨を吸収する細胞の方が元気になってしまい、骨の量が少なくなってしまうのです。

骨の強度を測る尺度として、骨密度がよく使われますが、これは骨のカルシウム量を測るものです。カルシウムが多くなるほど骨は硬くなります。しかしそれだけでは骨は強くはなりません。骨にはカルシウムのほかにコラーゲン繊維と言われるタンパク質もあって、この二つが織りなすことによって弾力性のある骨ができるのです。建物で使われる鉄筋コンクリートにたとえれば、固さを作るコンクリートはカルシウムにあたり、柔軟性を作る鉄筋は、骨ではコラーゲン繊維に相当します。これらがバランスよく合わさって丈夫な骨が出来上がるのです。
 

圧迫骨折と遅発性麻痺

脊椎圧迫骨折のイラスト背骨が弱くなると圧迫骨折を起こすことが多くなります。骨折というと、かなり痛いものと思われるかもしれませんが、圧迫骨折では、必ずしもそうでない場合があります。レントゲンで圧迫骨折が見つかって、後から考えれば、そういえば少し前に腰が痛いことがあった…と思い出す程度のこともあります。高齢者の方が、腰が曲がったり、背が何センチも低くなったと言っておられるのをよく耳にしますが、圧迫骨折が原因のことがよくあります。それも知らず知らずのうちに、というのは、あまり痛くなかったからなのでしょう。

圧迫骨折は、自然と骨が固まって、治ることが多いものです。骨は体を支える大事な器官ですから、自然治癒力が強いのです。ただ多くの場合、治ったとしても変形が残ります。背骨の圧迫骨折の場合、変形すると、ほとんどが、前がつぶれた形になって、三角形のようになりますから、その結果、腰が曲がってしまうのです。骨折が治れば痛みは治まります。でも、もしそのために腰がかなり曲がってしまうと、腰をのばすことができなくなってしまうこともあるのです。

圧迫骨折は、多くは骨粗しょう症で骨が弱いため起こるのですから、骨もうまくくっつかないことがあります。骨がうまくくっつかない場合、偽関節といって、骨折したところがいつまでもグラグラし続けてしまう場合があります。そうなると痛みも続きますが、それと同時に徐々にそこから神経を圧迫するようになって足が動かなくなることがあります。背骨の中には脊髄といって、脳から身体中に分布する大きな神経が通っているからです。そこが圧迫されると足が動かなくなったり、尿や便が出にくくなったりします。遅発性麻痺といって、麻痺が徐々に進行してくるのです。

神経の圧迫が起こってくると、徐々に足の痺れが始まります。通常は、腰の痛みも伴います。さらに進行すると、足の痛みが出たり、立とうとしても立てないような、足の麻痺が起こる場合もあります。更に悪化すると、排尿、排便ができなくなる場合もあります。こうなると手術をしなければ、もとにもどらならなくなってしまいます。
 

骨粗しょう症の治療

最近、骨粗しょう症に対する治療薬が、たくさんできてきました。骨は硬くて、成人になれば大きさも形もほとんど変わりませんから、あまり生きているとは感じないかもしれませんね。でも、やはり骨には細胞も血管もあって、生きているのです。骨の中には骨を作る細胞と、骨を吸収する細胞があって、常に古くなった骨を吸収して、新しい骨に入れ替えています。ですから、正常の骨は、骨の形成と吸収がバランスを保って維持されています。骨粗しょう症の多くは、このバランスが崩れて、骨の吸収の方が上回ってしまっているために起こります。
骨粗しょう症の治療は、大きく分けて、骨を作る作用を増強する薬と、骨を吸収する作用を抑える薬に分かれます。最近最もよく使われていて、最も有効な薬の一つには、骨の吸収を防ぐビスフォスフォネートと言われる薬のグループがあります。毎日飲む薬もありますが、週一回月一回、起床時に服用する薬、あるいは注射薬など、いろいろなタイプの剤型があります。

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