腰部脊柱管狭窄症
腰の背骨(脊椎)の中には、脊柱管という脊髄(神経)の通り道があります。この通り道が狭くなるのが脊柱管狭窄症です。ここには、足や膀胱に行く神経がすべて通っているので、ここで神経が圧迫されると腰から下が麻痺したり、しびれて歩きにくくなるのです。
人間の骨は永年使っていると、傷んで少しずつ変形してきます。変形した骨や軟骨が神経を圧迫すると、この病気になります。圧迫は10年以上かかって徐々に起こるものですが、すぐには症状を出さず、永年の圧迫によって神経が傷んでくると症状が出てきます。
最初は足のしびれ、特に膝から下が歩くとき、重く感じたり、しびれたり、痛くなったりします。症状は日によって、しびれ、痛みが強いときもあり、またさほど気にならない日もあるなど、よくなったり悪くなったりを繰り返すのが普通です。ただ、病気が進行してくると調子の良い日が少なくなっていき、歩くたびに痛みが出たり、しびれがきつくなって歩けない、という症状になっていきます。少し歩くとしびれ、痛みが強くなって、しゃがみ込んでしまう、しばらくしゃがんでいるとまた歩ける、という状態になります。これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。症状が進行するにつれ、一度に歩ける距離が短くなってきます。さらに症状が進んでくると脊髄の機能が低下して、足の力が入りにくくなったり、尿や便が出にくくなったり頻尿になったりします。これは、脊髄の神経が永年の圧迫によって傷んで機能が低下してしまったため起こります。通常は月単位、年単位で徐々に起こってくるものですが、自分自身では進行に気付かず、突然発症して気付く場合も少なくありません。
腰部脊柱管狭窄症の治療法
足のしびれがあっても、歩行に大きな支障がない程度であれば、腰部、下肢を温めたり、電気を当てたりする物理療法や、リハビリが有効です。たとえ腰痛がなくても腰を保護するサポーターやコルセットは、脊髄神経への刺激を避ける意味で有効です。同時に、ウォーキングや水中歩行など日常生活での軽い運動を続けることが、下肢機能の維持には有効です。余裕があれば、トレーニングマシンを使って筋力を維持するのも有効ですが、あまり無理をしない注意も必要です。薬物療法では、主にプロスタグランジン製剤で脊髄神経の血流を改善することで、足の痛み、しびれや歩行障害が改善することが期待できます。